2026.05.29 ブログ
自社株の相続税評価はこう決まる|純資産価額方式をやさしく解説
自社株の相続税評価はこう決まる|純資産価額方式をやさしく解説
- 非上場株式の評価方法のひとつ「純資産価額方式」とは何か
- 計算の流れをステップごとに把握できる
- 評価額が高くなる理由と対策の方向性がわかる
非上場株式の評価とは?
中小企業のオーナー経営者が亡くなった場合、その方が保有していた自社株式も相続財産として相続税の対象になります。上場株式であれば市場価格があるので評価は明快ですが、非上場株式には市場がありません。そのため、税法上のルールに従って「評価額」を算定する必要があります。
非上場株式の主な評価方法は次の3つです。
- 類似業種比準価額方式…上場している同業他社と、配当・利益・純資産の3要素を比較して算出する方法
- 純資産価額方式…会社の資産と負債を相続税のルールで評価し直し、1株あたりの解散価値として算出する方法
- 折衷方式…上記2つを一定割合で組み合わせる方法
どの方式が適用されるかは「会社の規模」によって決まります。大会社は類似業種比準価額方式が原則、小会社は純資産価額方式が原則、中会社はその折衷です。本コラムでは、特に中小企業のオーナーが知っておくべき「純資産価額方式」に焦点を当てて解説します。
純資産価額方式のしくみを図解で理解する
純資産価額方式は一言でいえば、「今この瞬間に会社を解散させたら、株主の手元にいくら残るか」をベースに株式の価値を算定する方法です。ただし、単純に帳簿上の純資産を使うのではなく、すべての資産・負債を相続税のルールで評価し直す点がポイントです。
引き直した総資産
相続税ルールで再評価
すべての債務
純資産額
各ステップをくわしく見てみましょう
STEP 1:相続税評価額で資産を洗い直す
帳簿に載っている資産(簿価)をそのまま使うのではなく、すべての資産を相続税の評価ルール(財産評価基本通達)に従って評価し直します。土地は路線価方式または倍率方式、上場株式は株式市場の価格、預貯金は残高(既経過利子含む)などがその基準です。長年保有してきた不動産など、帳簿価額より時価が大幅に上がっている資産があると、この段階で評価額が膨らみます。
STEP 2:負債を把握する
会社が抱えるすべての債務(借入金・買掛金・未払費用など)を合計します。負債が多いほど純資産は小さくなり、株式評価額は下がります。
STEP 3:相続税評価による純資産を出す
STEP 1の総資産からSTEP 2の負債を引いた金額が「相続税評価額ベースの純資産」です。会社を解散させた場合に株主の手元に残るであろう財産のイメージです。
STEP 4:法人税等相当額(37%控除)を差し引く
実際に会社を解散して資産を売却すれば、含み益には法人税がかかります。そのコストを見込んで、「相続税評価額ベースの純資産(STEP 3)」と「帳簿上の純資産(簿価純資産)」の差額(=含み益の合計)に 37% を乗じた金額を控除します。これが「法人税等相当額控除」です。ただし、この控除は持株割合が50%超の同族株主が適用されるケースなど、一定条件のもとで認められます。
| 相続税評価額ベースの総資産 | 10億円 |
| 負債合計 | 4億円 |
| 相続税評価の純資産 = A | 6億円 |
| 含み益(評価差額 2億円)× 37% = B | △ 0.74億円 |
| 1株評価の基礎となる純資産(A-B) | 5.26億円 |
なぜ評価額が高くなりがちなのか?
純資産価額方式の最大の特徴は、含み益を持つ資産が多いほど評価額が高くなる点です。長年事業を続けてきた会社ほど、創業時から保有する不動産の値上がりや内部留保の蓄積によって純資産が膨らみやすくなります。特に注意が必要な資産は以下のとおりです。
たとえば、創業30年の製造業で、本社工場の土地が簿価500万円・時価2億円に値上がりしているようなケースでは、その差額(含み益)が評価額に大きく影響します。帳簿上は赤字でも、不動産の含み益次第で相続税評価額が数億円になることもあるのです。
経営者として知っておくべき対策の方向性
純資産価額方式は「会社の財産を全部売った場合の手取り額に近い価値」と理解できます。会社が豊かになればなるほど株価(評価額)も上がり、後継者の相続税・贈与税負担が増します。事業承継対策を考えるうえでは、以下の視点が重要です。
- 評価方式の確認:会社の規模によって適用される方式が異なります。従業員数・総資産・取引金額などの基準で「大会社・中会社・小会社」に区分され、それぞれ適用方式が変わります。まず自社がどの区分に該当するかを確認しましょう。
- 株価の引き下げ対策:生命保険の活用による利益圧縮、役員退職金の支給、設備投資など、合法的かつ計画的に純資産を圧縮して株価を引き下げる手法があります。ただし、過度な施策は事業への悪影響もあるため、専門家との連携が不可欠です。
- 早期の承継計画:株価が相対的に低い段階で後継者へ株式を移転することが、相続税・贈与税の両面でコスト削減につながります。「まだ先でいいか」と先送りにすると、株価が上がってから動くことになり、後継者の税負担が一気に増す可能性があります。


