2026.06.07 ブログ
自社株の相続税評価はこう決まる|類似業種比準価額方式をやさしく解説
| 評価方式 | 概要 | 主な適用場面 |
|---|---|---|
| 類似業種比準価額方式 | 上場企業の株価を参考に評価 | 大会社・中会社・ 小会社(選択適用可) |
| 純資産価額方式 | 会社の純資産(資産−負債)で評価 | 全規模・土地保有特定会社など |
※ 会社の規模(大会社・中会社・小会社)は、従業員数や売上高などによって区分されます。小会社は純資産価額方式が原則ですが、類似業種比準価額方式と純資産価額方式の併用(L=0.50)を選択することもできます。
各規模における評価方法の概要は次のとおりです。
📋 図1-2:会社規模別の評価方法と「L(類似業種比準割合)」
| 会社規模 | 評価方法 | Lの割合(類似業種比準の混合率) |
|---|---|---|
| 大会社 | 類似業種比準価額方式 (純資産価額方式も選択可) |
L=1.0(100%) |
| 中会社(大) | 類似業種比準価額 × L + 純資産価額 ×(1-L) |
L=0.90 |
| 中会社(中) | L=0.75 | |
| 中会社(小) | L=0.60 | |
| 小会社 | 純資産価額方式 (類似業種比準との併用も選択可) |
L=0.50(選択時) |
※「L」は類似業種比準価額方式の適用割合です。Lが大きいほど類似業種比準価額の影響が大きく、一般的に株価が低く算出される傾向にあります。小会社でも選択により L=0.50 の併用評価が可能なため、純資産価額方式のみの評価より有利になるケースがあります。
■ 類似業種比準価額方式とは何か
| 記号 | 意味 |
|---|---|
| A | 類似業種の上場株価(国税庁が公表) |
| B / b | 1株あたりの配当金額(B=類似業種、b=評価会社) |
| C / c | 1株あたりの年利益金額(C=類似業種、c=評価会社) |
| D / d | 1株あたりの純資産価額(D=類似業種、d=評価会社) |
| 斟酌率 | 大会社:0.7 / 中会社:0.6 / 小会社:0.5 |
ポイントは、3つの比率(配当・利益・純資産)の平均値で計算する点です。これにより、どれか1つの指標だけに左右されず、バランスよく評価されるしくみになっています。
■ 3つの比準要素が株価に与える影響
🔍 図2:3つの比準要素と株価への影響
| 比準要素 | 自社の数値が高いと… | 自社の数値が低いと… |
|---|---|---|
| ① 配当金額(b/B) | 株価が上がる ↑ | 株価が下がる ↓ |
| ② 年利益金額(c/C) | 株価が上がる ↑ | 株価が下がる ↓ |
| ③ 純資産価額(d/D) | 株価が上がる ↑ | 株価が下がる ↓ |
※ 各要素を低く抑えることが「株価引き下げ」につながり、相続税の節税に直結します。
特に重要なのが「② 年利益金額(c/C)」の比率です。利益が大きい年は株価が高くなりやすく、相続税も増加します。逆に、退職金の支給や設備投資などで利益を適正に圧縮した場合、評価額が下がることになります。
■ 経営者が押さえるべき「株価対策」の考え方
類似業種比準価額方式は、経営の実態が株価に直接反映される仕組みです。したがって、事前に計画的な対策を講じることで合法的に評価額を引き下げることが可能です。代表的な方法を整理します。
💡 図3:株価引き下げの主な対策
① 役員退職金の支給
多額の退職金を計上することで、利益(c)が大きく減少し、株価を引き下げる効果があります。
② 配当の見直し
配当を減額または無配にすることで、比準要素(b)が下がり、株価が低く評価されます。ただし株主への影響も考慮が必要です。
③ 株式移転・分割の活用
株式数を増やすことで1株あたりの各指標を小さくし、相対的に株価を引き下げる手法です。
④ 設備投資・含み損の活用
事業に必要な設備投資を行い利益を圧縮したり、含み損のある資産を売却して損失を計上することで評価を下げられます。
注意点:これらの対策はいずれも事業の実態に基づいて行うことが大前提です。節税のみを目的とした不自然な操作は税務調査で否認されるリスクがあります。必ず税理士・税務の専門家に相談のうえ進めてください。
■ 比準要素数1の会社・ゼロの会社に注意
比準要素(配当・利益・純資産)のうち、2つ以上がゼロになってしまうと「特定の評価会社」に該当し、類似業種比準価額方式が使えなくなります。この場合は純資産価額方式のみで評価され、一般的に評価額が高くなってしまいます。
⚠️ 要注意:比準要素数がゼロ・1の会社
- 3要素すべてがゼロ → 純資産価額方式のみ適用(株価が大幅に上がる可能性)
- 2要素以上がゼロ → 比準要素数1の会社として特別扱い
- 赤字続きや無配・増資を繰り返す場合は特に注意が必要
■ まとめ:事前対策が相続税を大きく左右する
類似業種比準価額方式は、自社の配当・利益・純資産という経営の実態が株価に直結する仕組みです。相続が発生してからでは対策が取れないケースも多く、5年〜10年単位の長期的な視点で計画的に取り組むことが重要です。
✅ 経営者が今すぐ確認すべきこと
- 自社の会社規模区分(大・中・小)を確認する
- 現在の1株あたり配当・利益・純資産の水準を把握する
- 類似業種の上場株価(国税庁公表)と比較する
- 税理士と連携し、株価引き下げ対策の余地を検討する
- 事業承継計画と相続税対策を一体的に設計する
非上場株式の評価は複雑で、専門的な知識が求められます。自社の株価がどの程度になるか、一度専門家に試算してもらうことをお勧めします。「まさかこんな金額になるとは…」という事態を防ぐために、早めの備えが何より大切です。
※ 本コラムは2025年時点の税制に基づく一般的な情報提供を目的としたものです。個別の税務判断については、必ず税理士等の専門家にご相談ください。


