2026.07.28 ブログ
相続税はいくらから?基礎控除の計算方法
「うちは相続税がかかるのだろうか」——ご家族の相続を意識したとき、多くの方が最初に抱く不安です。結論からいえば、相続税はすべての人にかかるわけではありません。「基礎控除」という非課税の枠があり、遺産がその枠に収まれば相続税はかからず、申告も原則不要です。カギを握るのが、この基礎控除の金額です。本記事では、「相続税はいくらから課税されるのか」を、基礎控除の計算方法から相続税額の求め方まで、図解を交えて相続専門の税理士がわかりやすく解説します。
結論:相続税は「基礎控除」を超えたらかかる
相続税がかかるかどうかの分かれ目は、次の式で決まります。
基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
遺産の総額がこの基礎控除額以下なら相続税はかからず、申告も原則不要。超えた場合にのみ、超えた部分に相続税がかかります。法定相続人が1人なら3,600万円、2人なら4,200万円、3人なら4,800万円が目安のラインです。
相続税の基礎控除とは?
基礎控除とは、「ここまでの遺産には相続税をかけません」という非課税の枠のことです。亡くなった方(被相続人)が残した財産の総額が、この基礎控除額を超えなければ、相続税はかかりません。
基礎控除は、すべての相続に自動的に適用されます。特別な手続きや申請は不要です。そして金額は、「法定相続人が何人いるか」によって変わります。相続人が多いほど基礎控除額は大きくなり、その分だけ相続税がかかりにくくなる仕組みです。
なお、この基礎控除額は2015年(平成27年)の税制改正で引き下げられました。改正前は「5,000万円+1,000万円×法定相続人の数」だったため、以前より相続税がかかる方が大きく増えています。「昔は関係なかったから、うちも大丈夫」とは限らない点に注意が必要です。
【図解1】相続税がかかるかどうかの判定
→ 相続税はかからない
申告も原則不要
→ 超えた部分に相続税がかかる
申告・納税が必要
基礎控除額の計算方法
もう一度、計算式を確認しましょう。
3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
法定相続人の数を当てはめるだけです。人数ごとの基礎控除額を早見表にまとめました。
| 法定相続人の数 | 基礎控除額 |
|---|---|
| 1人 | 3,600万円 |
| 2人 | 4,200万円 |
| 3人 | 4,800万円 |
| 4人 | 5,400万円 |
| 5人 | 6,000万円 |
たとえば、お父様が亡くなり、お母様・お子様2人が相続人であれば、法定相続人は3人。基礎控除額は3,000万円+600万円×3人=4,800万円です。遺産の総額が4,800万円以下なら、相続税はかかりません。
「法定相続人」を正しく数える
基礎控除の計算で最も間違いやすいのが、この法定相続人の数え方です。ここを誤ると、基礎控除額も相続税額も狂ってしまいます。
法定相続人とは、民法で定められた「財産を相続する権利のある人」です。配偶者は常に法定相続人となり、それ以外は次の順位で決まります。上の順位の人がいれば、下の順位の人は相続人になりません。
【図解2】法定相続人の順位
たとえば「配偶者・子2人」がいる場合、第1順位の子がいるため、被相続人の父母や兄弟姉妹は相続人になりません。法定相続人は配偶者と子2人の計3人です。
数え方で間違えやすいポイント
次のようなケースは特に注意が必要です。相続放棄した人も、基礎控除の計算上は法定相続人として数えます(放棄がなかったものとして人数に含めます)。養子は、実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人まで数に含められます。また、亡くなった子の子(孫)が代わりに相続する「代襲相続」の場合、その孫も法定相続人に数えます。判断に迷ったら、自己判断せず専門家に確認することをおすすめします。
相続税がかかる人は、実際どのくらい?
「相続税は一部のお金持ちだけの話」というイメージをお持ちの方も多いかもしれません。しかし、先ほど触れた2015年の基礎控除引き下げ以降、相続税の課税対象となる方は大きく増えました。改正前は亡くなった方のうち相続税がかかるのは4%程度でしたが、改正後はその割合がおよそ2倍に高まり、特に地価の高い都市部ではさらに高い水準になっています。
その最大の理由が、不動産、とりわけ自宅の土地の評価額です。東京23区をはじめとする都市部では、ご自宅の土地だけで数千万円規模の評価額になることも珍しくありません。預貯金がそれほど多くなくても、「自宅+預貯金」を合計すると基礎控除を超えてしまう、というのが近年の典型的なパターンです。「うちは資産家ではないから関係ない」と考えていた方が、いざ試算してみると課税対象だった、というケースは決して少なくないのです。
「遺産の総額」には何が含まれる?
基礎控除と比べる「遺産の総額」も、正しく把握する必要があります。含まれるもの・差し引けるものを整理します。
| プラスの財産(加える) | マイナス(差し引ける) |
|---|---|
| 預貯金・現金 | 借入金などの債務 |
| 土地・建物(不動産) | 葬式費用 |
| 株式・投資信託など | 未払いの税金・医療費 |
| 生命保険金・死亡退職金 ※ | — |
※生命保険金・死亡退職金には、それぞれ「500万円 × 法定相続人の数」の非課税枠があり、その枠を超えた分だけが遺産に加算されます。
特に注意したいのが不動産の評価です。土地は時価そのものではなく「路線価」などで評価され、建物は「固定資産税評価額」で評価されます。ご自宅の土地の評価額が、思いのほか高くなることは珍しくありません。都市部に持ち家がある場合、預貯金が多くなくても基礎控除を超えるケースが多いため、注意が必要です。
基礎控除を超えたら、相続税はいくら?
遺産が基礎控除を超えた場合、超えた部分(課税遺産総額)に対して相続税がかかります。税率は取得金額に応じた8段階(10%〜55%)で、下の速算表を使います。
| 法定相続分に応じた取得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1,000万円以下 | 10% | — |
| 3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
| 5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
| 1億円以下 | 30% | 700万円 |
| 2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
| 3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
| 6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
| 6億円超 | 55% | 7,200万円 |
出典:国税庁「No.4155 相続税の税率」をもとに作成
計算例:遺産6,000万円、相続人が配偶者と子1人の場合
実際に計算してみましょう。手順は次のとおりです。
①基礎控除を引く
6,000万円 −(3,000万円+600万円×2人=4,200万円)= 1,800万円(課税遺産総額)
②法定相続分で分ける
配偶者1/2=900万円、子1/2=900万円
③速算表で税額を出す
900万円 × 10% = 90万円(配偶者・子それぞれ)
相続税の総額 = 90万円 + 90万円 = 180万円
④実際の取得割合で按分し、各種控除を適用
配偶者には「配偶者の税額軽減」があり、実際の負担はさらに軽くなります。
このように、相続税は「遺産の全額」にかかるのではなく、基礎控除を引いた後の金額に対してかかります。基礎控除を少し超えた程度であれば、税額はそれほど大きくならないことも多いのです。
注意:税額がゼロでも「申告が必要」な場合がある
見落とされがちですが、非常に重要な点です。「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地等の特例」を使って相続税がゼロになる場合でも、申告が必要です。これらの特例は、申告書を提出して初めて適用されるからです。「税額ゼロだから申告しなくていい」と考えて申告を怠ると、特例が使えず、かえって課税されてしまうこともあります。基礎控除ぎりぎり、あるいは特例で税額ゼロになりそうなケースこそ、専門家への確認が大切です。
基礎控除を超えそうなときに、まずすべきこと
試算の結果、遺産が基礎控除を超えそうだと分かった場合でも、慌てる必要はありません。相続税には、負担を大きく軽減できる制度がいくつも用意されています。代表的なものを押さえておきましょう。
配偶者の税額軽減は、配偶者が相続する財産のうち「1億6,000万円」または「法定相続分」までは相続税がかからないという、非常に大きな制度です。小規模宅地等の特例は、自宅の土地などについて、一定の要件を満たせば評価額を最大80%減額できるものです。都市部の持ち家がある方にとっては、これが使えるかどうかで税額が大きく変わります。ほかにも、生命保険金・死亡退職金の非課税枠(500万円×法定相続人の数)などがあります。
ただし、前述のとおりこれらの特例の多くは「申告して初めて適用される」ため、使えるはずの特例を知らずに申告しなかったり、逆に申告を省いてしまったりすると、余計な税負担が生じかねません。相続税の申告と納税には「亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内」という期限もあります。財産の評価や特例の判断には時間がかかるため、基礎控除を超えそうだと感じた段階で、できるだけ早く専門家に相談しておくことが、結果的に負担を抑える近道になります。
まとめ
相続税がかかるかどうかは、「遺産の総額」が「基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)」を超えるかどうかで決まります。法定相続人が1人なら3,600万円、2人なら4,200万円、3人なら4,800万円が目安のラインです。ただし、法定相続人の数え方や不動産の評価、各種特例の適用など、正確な判定には専門的な知識が必要です。特に都市部に持ち家がある場合は、「うちは大丈夫」と思っていても基礎控除を超えているケースが少なくありません。
当事務所は新宿区を拠点に、東京23区全域および三鷹市・武蔵野市・町田市など都下エリアの相続税申告・生前対策のご相談に対応しています。「うちの場合、相続税がかかるのか」「いくらになるのか」を、財産の状況をお伺いしたうえで具体的に試算いたします。相続税でご不安のある方は、お気軽にご相談ください。
※本記事は2026年時点の税制に基づいています。基礎控除額・税率・各特例の内容は改正される場合があり、個別の事情により相続税額は異なります。正確な判定・試算にあたっては、最新の制度を確認のうえ、当事務所または専門家にご相談ください。


