2026.07.21 ブログ
生前贈与と相続、どっちがお得?
「元気なうちに財産を子や孫へ渡しておく生前贈与と、亡くなってから引き継ぐ相続。結局どちらが得なのか」——これは相続対策を考え始めた方が、最初にぶつかる疑問です。しかも2024年の税制改正で生前贈与のルールが大きく変わり、従来の「暦年贈与でコツコツ」という定番の対策が、以前ほど単純には効かなくなりました。本記事では、生前贈与と相続の違い、2024年改正のポイント、そして「どちらが得か」の判断軸を、相続専門の税理士がわかりやすく解説します。
結論:生前贈与と相続、どっちが得?
結論からお伝えすると、「どちらが得か」は財産の規模・家族構成・年齢(残された時間)によって変わり、一律の正解はありません。ただし大きな傾向として、財産が多く、早い段階から時間をかけて計画的に贈与できる方は「生前贈与」を活用した方が相続税を抑えやすいといえます。
一方で、2024年の改正により「亡くなる前7年以内の贈与は相続財産に加算される」ようになり、直前の駆け込み贈与では節税効果が得られにくくなりました。だからこそ、早めに正しい方法で始めることが、これまで以上に重要になっています。
そもそも生前贈与と相続はどう違う?
相続は、人が亡くなったときに、その財産を配偶者や子などが引き継ぐことです。財産の額が一定(基礎控除額)を超えると相続税がかかります。
これに対して生前贈与は、財産を持つ人が生きているうちに、子や孫などへ財産を渡すことです。こちらは贈与税の対象になります。生前贈与が相続対策として使われるのは、生きているうちに少しずつ財産を移しておけば、亡くなったときの相続財産(=相続税の対象)を減らせるからです。
ポイントは、贈与税は相続税よりも税率が高く設定されているという点です。「それなら贈与は損では?」と思われがちですが、贈与税には毎年使える非課税枠があり、これを長期間にわたって活用することで、トータルの税負担を相続より軽くできる場合があるのです。
生前贈与の2つの方法
生前贈与には、大きく分けて2つの制度があります。どちらを選ぶかで、対策の効果が大きく変わります。
① 暦年贈与(れきねんぞうよ)
1年間(1月1日〜12月31日)にもらった財産の合計が110万円までなら贈与税がかからないという制度です。毎年110万円ずつ、複数の子や孫へ、長い年数をかけて贈与すれば、まとまった財産を非課税で移すことができます。生前贈与の最も基本的な方法です。
② 相続時精算課税(そうぞくじせいさんかぜい)
60歳以上の親や祖父母から、18歳以上の子や孫へ贈与する場合に選べる制度で、累計2,500万円までまとまった財産を贈与税なしで渡せます(相続時に相続財産へ合算して精算します)。2024年の改正で、この制度にも年110万円の基礎控除が新設され、使い勝手が向上しました。ただし一度選ぶと暦年贈与に戻せないため、入口の判断が非常に重要です。
【重要】2024年改正で「7年ルール」に変わった
生前贈与を考えるうえで、絶対に押さえておくべきなのが2024年(令和6年)1月からの改正です。
従来、暦年贈与では「亡くなる前3年以内の贈与」だけが相続財産に加算されていました(=直前3年の贈与は相続税の対象に戻される)。これが改正により、「亡くなる前7年以内」へと段階的に延長されました。つまり、以前は「3年より前に贈与すれば節税になった」ものが、「7年より前でないと加算されてしまう」ようになったのです。
ただし、いきなり7年全部が対象になるわけではなく、経過措置があります。延長された4年分(亡くなる前4〜7年)については、合計100万円までは加算しないという緩和措置も設けられています。
2026年時点での注意点
2026年に相続が発生する場合は、まだ従来どおり「3年ルール」が適用される最後の時期にあたります。しかし2027年以降に相続が発生すると、2024年1月以降の贈与がさかのぼって加算対象になっていきます。そのため、「まだ3年ルールだから急がなくていい」のではなく、今のうちから計画的に贈与を始めておくことが、将来の相続税を抑えるうえで戦略的に重要です。
生前贈与と相続 比較表
それぞれの特徴を一覧にまとめました。
| 項目 | 生前贈与 | 相続 |
|---|---|---|
| 財産を渡す時期 | 生きているうち | 亡くなったとき |
| かかる税金 | 贈与税 | 相続税 |
| 税率の高さ | 高め(ただし非課税枠を活用可) | 贈与税より低め |
| 誰に渡すか選べるか | 自由に選べる | 法定相続人が基本 |
| 時間をかけた節税 | 向いている(早いほど有利) | — |
| 直前の駆け込み | 7年以内は加算され効果が薄い | — |
どちらを選ぶべきか、判断のポイント
生前贈与が向いているケースは、財産が基礎控除を大きく超えており、かつ贈与する側がまだお元気で、長い年数をかけて計画的に贈与できる場合です。時間を味方につけられるほど、非課税枠を活かした節税効果が高まります。
相続で引き継ぐ方がシンプルなケースは、そもそも財産が基礎控除の範囲内で相続税がかからない場合や、贈与する側が高齢で残された時間が短い場合です。無理に贈与しても7年ルールで加算され、効果が出にくいこともあります。
実際には、「生前贈与か相続か」の二択ではなく、両方を組み合わせるのが最も効果的です。暦年贈与・相続時精算課税・生命保険の非課税枠などを、財産の状況に応じて設計していきます。ここが専門家の腕の見せどころです。
注意:自己流の贈与は「否認」されることがあります
生前贈与は、ただお金を渡せばよいわけではありません。贈与契約書を作らない、親名義の口座で管理している(いわゆる名義預金)といった場合、税務調査で「贈与として認められない」=相続財産に含めると判断されるリスクがあります。せっかくの対策が無駄にならないよう、毎年の贈与契約・振込記録・受け取る側の口座管理まで、正しい形で残しておくことが不可欠です。
まとめ
生前贈与と相続のどちらが得かは、財産の規模・家族構成・残された時間によって変わります。2024年の改正で「7年ルール」が導入され、直前の駆け込み贈与は効きにくくなった一方、早くから計画的に取り組む生前贈与の重要性はむしろ高まっています。
当事務所は新宿区を拠点に、東京23区全域および三鷹市・武蔵野市・町田市など都下エリアの相続税申告・生前対策のご相談に対応しています。「うちの場合、生前贈与と相続どちらが有利か」「今から何をどう始めればいいか」を、財産の状況をお伺いしたうえで、具体的な数字とスケジュールでご提案します。相続でお悩みの際は、お気軽にご相談ください。
※本記事は2026年時点の税制に基づいています。生前贈与加算の期間や各制度の内容は改正される場合があり、個別の事情により最適な方法は異なります。実際の対策にあたっては、最新の制度を確認のうえ、当事務所または専門家にご相談ください。


